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== おはなし ==

カナリア雑貨店の怪 その2

赤ちゃんはすこやかに育ちまして、大声で泣いているのはあいかわらずですが、生活必需品の供給が安定したことで、私のキモチにも、ゆとりが生まれました。
お店のことも少し、再開の準備などできるようになって。よかった。なにもかも、まだ見ぬカナリア雑貨店のおかげ。

ただ、ひとつだけ、気になることがあります。
娘の顔が。あんまりわたしに、似てこないような気がする。
最近は、泣き声も、なんだかちょっと。赤ちゃんってこんな声でしたっけ?
とじこもりすぎて、育児ノイローゼ気味かもわかりません。そろそろ、お店を開店したいものです。

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今日も謎のカエルが、謎の方法で、配達にやってきています。
そして。カエルは、初めて、口をきいたのでした。

「カナリアの食べ物、これ以上、赤ちゃんに食べさせないほうがいい」
「え?」
わたしは、言葉の意味より、カエルはしゃべったことに驚いていました。なんだ、このカエル、口がきけるんだ。それも、ケロケロなんてんじゃなく、少しくぐもってはいますが、明瞭な発声なんでした。
「これ以上、カナリアのものを赤ちゃんが食べたら、いけない」
カエルはそういうと、くるりと踵を返して、たたたっと、階段を下りて行ってしまいました。

首をかしげながらへやにもどると。
娘はベビーベッドの柵をつかんで、立ち上がっていました。
わあ!初めて立った。駆け寄って抱き上げようとしたその時。
娘は一声、鳴いたのです。ええ、そのとおり、鳴いたのです。

ピィーッというような、鋭い、鳥のような声。
わたしは驚いて、抱こうとした手を思わずひっこめました。

娘はもう一声鳴くと、なんと。
開けていた窓から、飛び出して行ってしまった。ほんの一瞬のことでした。
呆然と立っているわたしの耳に、パタパタと聞こえていたのは、あれは、ほんとに羽音でしょうか?


何かの気配に、はっと振り向くと、帰ったはずの配達蛙が、いつのまにか、背後にいるのでした。
カエルは壁に向かって何かしながら、わたしをふりかえります。
なに?
蛙はわたしの手をひっぱって、いつのまにか壁に出現した、ドアの前に立たせました。そして、私の手を引いて、ドアノブに、触らせようとしました。ひんやりぺったりした、蛙の手でした。
え、ここ、さっきまで、ただの壁だったわよね?もしや、このドアに入れというのでしょうか?

ドアには、カナリア雑貨店、と、書いてありました。よろよろと、ゆがんだへんてこなその文字が不吉な感じで、私はもちろん、そんなヤバそうなドアは開けたくありません。
でもでも。
飛び去った子供を探す手がかりが、あるかもしれない。ためらったのち、わたしは、ついにドアをあけました。

つづく


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