== おはなし ==

小鳥がおしえてくれた話 その3

人間は、しょせん習慣の生き物です。って、外見は鳥になってしまったけれど。
べべちゃんは、次第にこの生活も、悪くないなあと、思うようになりました。
そらちゃんは、親切で、よくお世話もしてくれますし。ダイエットダイエットと、ちょっぴりうるさいのと、すごいおしゃべりなのがあれですが。
これまでの人生でしゃべれなかったぶんを、取り戻そうというのか、くらいに、寝るまでしゃべり続けるそらちゃんでした。
そこさえがまんすれば、たまには、大好物のおはぎだって、買ってきてくれるし。
なによりからだが軽い。
まるで羽がはえたよう…て、はえてるんですが。
人間時代は、いろんなことをよく考えたべべちゃんですが、小鳥になったら、脳みそも、小鳥になったのかもしれません。悩むことがなくなったというか。
毎日、ふわふわと、楽しい気がしてきました。
それにひきかえ、そらちゃんは。
朝起きるのがつらそうだったり、時々、夜中に、重い重いと泣いていることも。え、こんなにスリムなボディなのに?
だけどやっぱり、人間の体は、重いんだよね…

ある時、それは、格別に冷たい朝で、寒さに弱いそらちゃんは、もう涙目になって、出勤していきました。
べべちゃんは、テレビをつけて、雪で会社に行く人が転んだり、電車が止まっているのをながめながら、ああ、わたし幸せ。と、思いました。
お部屋はあったかく、静かで、大好きな野菜ジュースもありますし。
こんな日に、お仕事にも行かなくていいのです。

その夜、雪で電車がとまったり、さんざんな目にあって、真夜中にやっと帰りついたそらちゃんが、言いました。
「もうー限界。もういや」
べべちゃんは、どっちでもいい気もしましたが、春になったらかわいくしてお出かけも、またしてもいいかな、したいかな、何よりこんなに働いているそらちゃんが、かわいそうでもあります。ボディを交換しても、鳥の身に、世間はきついのでしょう。
ウサギの小瓶を取り出して、べべちゃんはちゅっと飲み干しました。

ボンッ。
今回は、派手に、ケムリの中から登場です。
「けっこう持ったねえ、あんたたち。で、お互いの気持ちは一致した?一致しなくては、妖術は効かないよ」
「女の子に戻りたい」
「鳥に戻りたい」

二人は同時に叫びました。「けっこう」
満足そうにウサギはにんまりして、そして、二人の視界に、ウサギの青い瞳がいっぱいに、おしよせひろがってきました。
まるで、海にのまれるよう。

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「行ってきまーす」
べべちゃんは、元気にドアをあけます。べべちゃんの今の仕事場は、とある新聞社です。。
そらちゃんが、ちちちとさえずって見送ります。
小鳥にもどったそらちゃんは、もう言葉は話せませんが、かわいく鳥らしく、さえずるようになったのです。
そして、べべちゃんは、ちょっぴり鳥の言葉がわかるときがあります。
それで二人は、じゅうぶん満足でした。
でも、もうひとつ、奇妙なことがありました。
あれから、どうしても、カナリア雑貨店が、みつからないのです。
朝でかけたり、夕方行ってみたり、色んな道を試しても、二度とあの、たそがれの中に見えてくる階段と、やわらかな店の灯りを見つけることはできなかったのです。
                  2012.3.4脱稿


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