== おはなし ==

カナリアかばん店 その3

ぐりことびすこは、とびあがりそうになりました。
奥のほうに、お店の人がいたのです。
「こんにちは」
ふたりはいそいで、ごあいさつしました。
よくみると、きれいなお洋服を着た、おんなのひとでした。

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「こけしをみにきてくださったのですね」
おんなのひとは優しく言いましたが、実の所、ふたりとも、この世に生を受けて10年、こけしのことなんて、考えたことが、あったでしょうか。
しかし、ここでそれを言うのはまずい、くらいは、10年も生きていたらわかるのです。

こどもたちがうなずくと、おんなのひとは、ずいぶんうれしそうでした。
「では、ゆっくりみていってくださいね
いいですか、こけしにはね、商業こけしと、伝統こけしがあるのですよ、そしてね」

そこから、こけしの解説が、始まりました。
ぐりこは、むずかしそうな説明を、うわのそらでききつつ、店内のこけしを見て回ることにしました。
もうちょっと明るいと、いいのにな。
お店がほのぐらいのは、間接照明と、高い天井から滝のようにかかっている、厚いカーテンのせいのようでした。
一生懸命、目をこらすと、どうも、誰か知っている人の顔に似たこけしが、いくつもあるように見えてきます。

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どのくらいたったのでしょうか。
ぐりこは、ふと、びすこが窓際で、おかしな動きをしているのに、気がつきました。

話をきくふりをしながらちょっとずつ、ぐりこはびすこのほうへ、移動しました。
「…なにやってるの?」
びすこは、カーテンをすこぉしめくったりしめたりしているようです。
「しっ…ほら、見て」
びすこがカーテンをあけしめすると、おんなのひとの顔に、外の光があったり消えたりするのです。
なんと!
光があたると、その顔が。


   鳥だあああ


こんなすごいもの、10年生きていても、見たことがありません。
ふたりは夢中になって、ちらちらと、光をおんなのひとにあてたり、消したりして、みとれました。
この人、鳥なんだ!
たぶん、図鑑でみた、黒つぐみって鳥らしいのです。

「あなたたちっなにしてるのっ」
とうとう気づかれてしまったようです。
おんなのひとは、さっきまでの優しい顔をかなぐりすて、もうすっかり鳥の顔になって、ふたりのほうに腕をのばして、こどもたちをつかまえようとしました。

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なんといってもつぐみなので、かわいくもあるのですが、巨大になるとそれは、やっぱりいささか脅威で、ふたりは一瞬、逃げ場を目で、さがしました。
その時。
棚いっぱいに並んだとりかごから、いっせいに、おもちゃの鳥たちが、けたたましくわめきたてました。
「閉店時間です!閉店時間です!」


そのとたん、おんなのひとは、もとの場所にすっと、もどりました。
顔も、ちゃんと人間に戻っていました
それきり、おんなのひとは、動かなくなりました。
ぐりこが突っついてみると、固い。
おんなのひとは、すっかりこけしになっていました。

ふたりが、さようならを言ったときも、おんなのひとは、何も答えませんでした。

ふたりのこどもは、急いで階段を駆け下りました。
外は、すっかり、暗くなっています。

「チラシでもらえるいいものって、なんだったのかなぁ」
びすこが、言いました。
結局、わからずじまいだったのですが、ぐりこは、なんとなく、それはもらわなくてよかったような、残念なような、おかしな気持ちがしました。
闇にのまれかかっている橋を、ぐりことびすこは、走って帰っていきました。


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