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== おはなし ==

めりとりり その1

いつからここにいるのか、もう、思い出せないのです。
気がつくと、りりは、水の底にいました。
おかあさんが、りりをここに、投げ入れたのです。
その記憶は、夢のようにぼんやりしています。
それから、ずいぶんときが流れたような、つい昨日のことのような、水の底では、時間は地上と違う流れかたをしているのでした。
おかあさんが、もう、りりを迎えにこないことはわかりました。
でも、おかあさんを、悪くなんて思いません。
一番いいドレスを着せてくれましたし、一番のおともだち、めりも、一緒に水に、入れてくれたのですもの。

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いいことだって、ありました。
地上にいたころは、おかあさんが何日も帰ってこないと、とてもおなかがすきました。
でも、ここにきてからは、りりはおなかがすかなくなりました。
ひとりぼっちでお留守番をしなくてはならないとき、寒くてたまらないことも以前はよくありましたが、水の底は、寒さもないのです。

めりがいてくれれば、さみしいことも、ありません。
地上では何にもしゃべらないめりでしたが、ここにきてからは、りりが話しかけると、お返事もしてくれます。
不思議な事に、初めて聞くめりの声は、りりとおんなじ声でした。

「おかあさんは、りりをきらいになったんじゃないよね」
「そうよ、きらいだからじゃないわ」
めりがそう返事してくれると、りりは安心するのです。
そうです、おかあさんは悪くない、仕方なかったんだわ。
おかあさんだって、新しいおとうさんと、幸せになりたかったのですもの。
それには、りりがいてはいけなかったのです。

りりとめりは、貝殻や海藻、死んだおさかなを集めて、おままごとをします。
そうして、ふたり同じ声でしゃべっていると、りりはだんだん、どっちがめりでりりなのか、わからなくなる時があります。自分のほうがめりのような気がしてくるのです。

たぶん長い長い時が、流れたのです。
穏やかな水の暮らしでしたが、めりは、粘土のお人形。
少しづつ、水に溶けだしてきたのです。
めりがすっかりなくなったら、本当のひとりぼっちになってしまう!

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「どうすればいいの」
りりがすがるようにたずねると、めりは、ほとんど溶けてなくなろうとしているくちびるを、わずかに動かしました。
そのとき、お魚の大きな群れが、りりの頭の上を、さあっと通過しました。
その波で、ぼろぼろになっていためりは、最後のかけらまでこなごなに、崩れて、溶けてしまいました。

りりは、初めて泣きました。
地上のうちにいたときだって、おかあさんがいやがるから、りりは泣いたことがなかったのです。
泣きながら、お祈りをしました。
めりが最後につぶやいた言葉が、、お祈りって聞こえたからです。
水の中にきてからは、望むことがなくなったので、お祈りすることをすっかり忘れていました。

おうちの壁にかかっていた、百合に囲まれた優しそうな女の人の絵を、一生懸命思いだしながら、りりはお祈りをしました。



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