== おはなし ==

めりとりり その3

気がつくと、水のない場所にたおれていました。
土の上、覆いかぶさるたくさんの木々。
雨に湿った、葉っぱのにおい。
水のなかにいた記憶はぼんやりあるのですが、自分がだれなのか、思いだせません。
ふらつきながら立ち上がろうとすると、木のうしろに、誰かいるのが、みえました。
ちいさな、こども。
ひとりではありません。
何人ものこどもが、木のかげからでてきました。

わ…ぶただ…
こぶただわ…
ぶただ…

こどもたちのささやき。では、わたしは、ぶたという名前なのかしら。

こどもたちは、しだいに近づいてきて、口々に言いました。
うさこにみつかったら、たいへん。
そんな顔してたら、すぐ、ハムにされちゃうよ。
気の毒だけど、お顔がネガティブすぎ…
運気がさがる…
運気がさがる…

ひとりのこどもが、小さな鏡を渡してくれました。

20120403a.jpg


この間まで、おんなのこだったような記憶があるのですが、今、鏡に映るのは。
確かに、ぶたでした。
幸せになる契約をしたような記憶もあるのですが。幸せとはほど遠い、ぶちゃいくなぶたの顔でした。

こどもたちは、気の毒そうに言いました。
「あたしたち、ごはんもらいにうさこんちにいくけど、あなたは、きてはだめ。
できるだけ、うさこから、隠れていないと。
つかまったらハムにされちゃうわ」

子どもたちだって、たいしてかわいい子はいません、奇妙な子ばかり。まるきりカエルみたいな顔の子もいるし。
そんな子たちからまで、気の毒がられてしまいました。

20120403b.jpg


「この森は、広くないけど、隠れ場所はたくさんあるから、がんばってにげてねぇ」
奇妙なこどもたちの声援を背に、ぶちゃいくなぶたは、森のなかを、走りだしました。
何が待ってるのか知らないけれど、ハムにされてたまるもんか。
逃げて逃げて、逃げ続けてやる。

女の子のときはいつもおうちでひとり、じっとしていなくてはならず、水のなかでもじっとしていたんだっけ。こんなに走ったことは、生まれてから、あったでしょうか。
こんな姿にされちゃったけど、この森は危険もいっぱいらしいけど、そして、あいかわらずひとりぼっちだけど。
ぶたは今、これが幸せの一歩かもと、湧き上がるように感じながら、森の中を、ひたすら走ってゆきました。

     2012.4.1脱稿



20120404a.jpg
おかあさんおげんきですか、そのごおともだちできました…こぶた
┗ Comment:0 ━ Trackback:0 ━ 17:42:07 ━ Page top ━…‥・

== Comment ==






        
 

== Trackback ==

http://mamagotomori.blog44.fc2.com/tb.php/354-f46ce86c
 
Prev « ┃ Top ┃ » Next