== おはなし ==

ハナちゃん狼 その1

その日も、ハナちゃんにとっては、かわりばえしない、いつもの朝でした。
早めに登校すると、いつもさらに早く登校しているワタナベくんが、「ハーナコーハーナコー♪」コマーシャルの節で、からかっくることもいつもとおんなじ。
自分だって、勝三郎という古めかしい名前を気にして、みんなにKATくんなんて呼ばせてるくせに。
ハナちゃんは、KATくんの背中を、にらみつけてやりました。これも、いつものこと。

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ハナちゃんは、全然めだたない地味な子どもです。
いじめられたりもしないのですが、どこにいても、みんな、ハナちゃんが、見えていないようなのです。
ダンスでペアになるときも、いつもハナちゃんは、余ってしまいます。
カタオカさんが一人ですね、とイノウエ先生が言うと、みんな初めてハナちゃんに気がつくのです。

KATくんだって、かまうのは、朝、他の子がきていないときだけです。他の生徒がいると、やっぱりハナちゃんは、見えなくなるようなのです。
それは、先生だって、同じです。そのくせ、お手伝いが欲しい時だけ、担任のイノウエ先生はなぜかハナちゃんを思い出すらしいのです。
今日も、ハナちゃんは、放課後、もくもくとプリントのお手伝いをしていて、校門を出る、最後の生徒になってしまいました。

春の陽はまだ明るいけれど、風はちょっぴりさみしい、夕方の風でした。
でも、平気。
ハナちゃんがいなくても、おうちの人はどうせ、気がつかないんだから。
お姉ちゃんは自分のことで頭がいっぱいの、門限破りの15歳。
お母さんは、去年生まれた弟に、かかりきり。
お父さんは、隔週しか帰らない、タンシンフニンなのです。

ごはんに間に合えばだいじょうぶ。
モモイロ神社に寄って帰ろうかな。
最近、へんてこな屋台もでてるし。
ハナちゃんが、禁止の寄り道ロードをたどろうと曲がった角の電信柱に、人影がうずくまっていました。

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あたりには誰もいません。
ハナちゃんは、回れ右しかけました。
危険を感じたのです。
でも、ちらっと目をやると、その人の背中は、なんだか、苦しそうに、ピクピクしています。
ハナちゃんは、ちょっとだけ、近づいてみました。
かすかに、ハアハアいう息遣いも、きこえます。
丸めた背中は、おばあちゃんを、思いださせました。

「おばさん、どうしたんですか」
それで、ハナちゃんは、つい声をかけてしまいました。





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