== おはなし ==

おにんぎょ姫 最終話

お姫様は、人形を作ることを、やめてしまいました。
そしてある日出かけていくと、夜になっても王国に、帰ってきませんでした。

その夜、人形たちだけの会議が開かれました。

さて、王子様やお姫様にわからないことも、人形というものは全て、知っているものなのです。
お姫様は、人形たちといるのが一番幸せなのだということとか。
しかし、この王国には、もはやとどまれそうもありません。
こんな時どうすればよいかも、人形たちにはちゃんと、わかっていました。
人形と暮らすということは、そういうものなのです。


まるで普通の娘のように、お姫様が、王子様と映画をみたり、すてきなレストランでごはんを食べたりして、夜更けに帰ったときは、人形たちは、知らんふりで棚に並んでいました。うつろな眼、とじたままの口。11月に入った王国は空気も全体にひんやりとしていて、お姫様はなんだか悲しくなりました。
でも、月の終わりには、この王国を去り、大切な王子様のもとへ、嫁ぐのです。
人形たちとこんな冷たい関係になってしまったのは心残りですが、いつかきっと、わかってくれる日が、くると思うわ。

残務整理というものがあり、王子様は数日、仕事に追われました。
気がつくと、あのデートから、お姫様に会っていません。お姫様は、電話すらもっていなかったのでした。
王子様は、王国の門を、とんとんとノックしました。
しばらくまってからもう一度。また、もう一度。
試みに引いてみると、鍵はかかっていませんでした。
これって、礼儀を失するかな…

王子様は、ためらいましたが、心配でもあるし、思い切って、扉をひらきました。

20121121d.jpg


ちいさなつましい部屋でした。
裁縫の道具やわずかな本。小さなテーブルに置いたままの、お茶の道具。

王子様は、変な気がしました。
お姫様がいつも話していた、たくさんの人形は、どこにあるんだろう。
そんなものはひとつもありません。がらんとして、何日も、誰もいなかった部屋のようです。

もちろんお姫様の姿も、みあたりません。

カーテンもひいていない、南にむいた窓がわずかにあいており、公園の木の葉を舞わせた風が、小さな王国にふきこんできました。
そして風は、誰もいなくなった小さなテーブルの、小さなティーポットを押し倒してゆきました。



    おしまい


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