== おはなし ==

パレードに雨をふらせないで 最終回

最前列のかえるが、振り返って、うれしげにイナホ君に言った。
「イナホくーん、おかえりー」
かえるらしい、ぎゅわぎゅわっとした声だ。

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他のみんなも、口々に、イナホ君だイナホ君だと、ささやきあいだした。
リスが、おごそかに告げた。


「みなさん、イナホ君が、当劇場へ帰ってまいりました。
 拍手でむかえてあげましょう」
なんでぼくの名前を知ってるの?

動物や人形たちは、小さな手をパチパチとたたいた。それがまた、なんだかしょぼい音なんだが、口笛をふくものや足をパタパタさせるものもいて、やや騒然としてきた。
よくわからないが、イナホ君は立ち上がって、あいまいに、おじぎをしてみた。

「思い出しましたか、キミは10年と118日前に、人間になりたくてこの劇団を逃げ出した、イナバイナホ君なのです」

「あんまりもたなかったねえ」かえるがへらへらっと笑った。
みんなも、くすくす笑った。



「そうです、キミは、劇団がいやになって逃げ出し、今また、なりすました家族が不都合になったからといって、ここへ帰ってきた、身勝手な身勝手なイナホ君なのです」ホシムラさんは、大声で言った。
みんなが、どっと笑った。

イナホ君は、おかあさんの顔を思い浮かべようとしたが、アタマがぼんやりしてきた。

ぼくは、10年と118日前、このホシムラさんの妖術の本を盗んで逃げて、ひとりぼっちの女の人の子供になりすましたんだっけ…。



イナホ君はホシムラさんを見た。騒いでいる小動物たちを見た。
「ぼく、うちにかえらなっくちゃ」イナホ君はうめくように言った。
それでもやっぱり、おかあさんは、ぼくが帰らないと、心配するよ。

「今こそキミは、真実をみなければならない」

いつのまにか、舞台の中央に大きな鏡が現れ、人形たちがうやうやしく、それを支えていたんだ。
鏡の中では、おかあさんが、あ、おとうさんも、カナンちゃんもいる。
3人は、ほかほかと湯気のあがる鍋を囲んで、実に楽しげにごはんを食べていた。
誰も、イナホ君のことなんか、心配してないみたい。

おかあさんしあわせだわ
おかあさんが言っている。
かわいい娘がいてすてきなだんなさまがいて、幸せだわぁ
でもキミはもう一人こどもがほしかったんじゃないかな
おとうさんが言った。
ううん、コドモはカナンちゃんひとりさずかっただけでしあわせ
ねーっ
カナンちゃんとおかあさんは顔を見合わせて、にっこりした。
家族は3人でじゅうぶんよねっ
3人は、声をあわせて笑った。



「あれからイナホ君のまねをして、当劇場を逃げ出すものが、あいついだ」
ホシムラさんが、苦々しく言った。

「よって、うちは常に人手不足で、団員の調達に苦心を重ねているのだ。
イナホ君、キミは、罰として、これから千と63日間休む間もなく、ここで劇団員として働くように」


リスのホシムラさんが、いつのまにか手にしていた杖でイナホ君を指すと、イナホ君のからだが、どんどん小さく縮んでいった。
[うわぁぁぁぁ]
イナホ君がさけんだ時。

その時。

鏡の中のカナンちゃんが、イナホ君のほうを向くと、にんまり笑ってあっかんべーをしたんだ。

      ☆おしまいデス

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やっと顔出してもらえたわぁ。フフフッ




        

           
        私のパレードに雨を降らせないでちょうだい
        ぼんやりなんて生きられないの

        人生は砂糖菓子みたいで 太陽はバターでできてる

        雲を呼び雨を降らせるのはやめて
        飛ばずにいられないんだもの
        落っこちるのもへっちゃら

        だから私のパレードに雨をふらせないで
        ドラムをたたいて、バンドは行進するのよ
        

        もう誰も、私のパレードに
             雨なんか降らせないわ
                       ~ファニー・ガール~

                   














ぽち!(まもちゃんより)

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